遺言はその方が死んだ時に効力が発生します。
しかし、自分が死んだ後のことは、どんなに気になっても監視することはできませんね。
せっかく遺言書を残したのに、その存在を生前に知らされておかなければ、見つけてもらえない可能性もあります。
相続人の間で散々もめて、ようやく財産を分けた後、遺言が引き出しや本の間から出てきたなんてケースもあります。
人はいつ死ぬか分からないので難しいところですが、保管場所を家族に伝えるなどの必要があります。
事前に家族に伝えると、改ざんの虞があると不安な方は、貸金庫などに貴重品と一緒に保管しておくといいでしょう。
家族には、貸金庫の存在だけを知らせておきます。
生きている間は本人しか開けられないようにしておきますが、亡くなれば貴重品を引き出したくて、家族が一定の手続きのもと開錠するはずです。
貴重品とともに見つかるというわけです。
家や土地の権利証や、生命保険の保険証書など、相続が発生した場合に必要になるものを一式まとめておくと、保険金の請求漏れもなくなります。
2013年3月アーカイブ
お世話になった人や、縁が深かった人がいる場合は、身内じゃない状態でも、不動産などを遺言によって相続するケースがあるかもしれません。
ただ、金融資産ならそこまでの面倒さもないかもしれませんが、これが例に出したように不動産になってくると、自分の所有物にするために登記申請を行う必要があり、ここに色々な制約が発生してきます。
例えば、被相続人の身内や弁護士などに遺言執行者がいることになると思いますが、その人と一緒に登記申請をする必要があります。
亡くなった人の言葉が優先されますし、力を発揮するのですが、こういった制約があることも事実なのです。
ですから、遺志を受け継いでさっさと自分だけで名義を変更するとかが出来ないので、よく覚えておくべきでしょうね。
ただ、反対意見などもあり、この問題は複雑ですから、執行者が素人ではなくプロの場合は、お任せして、身内など素人の場合はこちらが雇ってお任せしてしまうのが無難であると私は思います。
自筆証書遺言を作成するには、自分の手で直接書くことが必要で、パソコンやワープロで作成した機械の文字では、効力が認められません。
この点、病気やケガなどで入院し、もう腕や手の力もなく文字を書くことができない、と言う時はどうしたらいいでしょうか。
途切れ途切れであれ、話すことができるから、テープに録音や、ビデオレターにしたいと考えるかもしれません。
しかし、テープやビデオレターの形では、編集される虞があるとして、効力を認めてもらうことができません。
そこで、こうした場合には公正証書遺言の方法を採ることが考えられます。
証人2人の立ち会いのもと、公証人に遺志を口頭で話し、それを公証人が文章にまとめます。
そして、それを読み聞かせて内容の正確性を確認し、公証人に預けるというものです。
証人は相続権がある家族など利害関係のある者はなれないので、医師や看護師に頼むといいでしょう。
口述する間に体調が悪化する可能性もあるので、ついていてもらえば安心です。
被相続人が、自分の意思を示す為に遺言を書いて、身内に託している場合、亡くなったのを見計らって適当に開けて、意思に沿って分配をすれば、それで問題がないと一見思ってしまいますが、実はそれでは不十分です。
なぜなら、いくら身内の中で意思の疎通が出来ていても、改ざんしたり偽造したり出来る可能性が物理的にあるわけですから、ちゃんと家庭裁判所で検認を受ける必要があるからです。
勝手に封を開けることなく、ちゃんと裁判所に提出して、手続きに沿って検認を受ける必要があるわけです。
もちろん、しっかりと記載した年月日も残されており、鑑定して調べても間違いなく本人の字であり、印鑑が残されているという完璧な状態であれば、検認の手続きを経なくても、遺言の効力が直ちに無くなってしまうことや、認められないうことはありませんが、法律では5万円以下の過料になってしまうという憂き目に遭いますので、しっかりとけじめをつけておく必要があることを覚えておくべきでしょうね。
基本的に、相続をする場合に遺言が強い効力を発揮することを知っている人は多いと思いますが、そのルールについて明確に知っている人は少ないと思います。
ですから、内容を直筆で書いて、しっかりと印鑑も押して、準備万端で亡くなったとしても、実は日付がないと無効になってしまうというまるで冗談みたいな話があったりもします。
ですから、ちゃんといつ書いたのかを、明記しておきましょう。
亡くなってしまう瞬間を予言できる人はいませんし、その瞬間に書くことは不可能ですから、書いた時が大切になってくるわけです。
ちなみに、年数や月を書いていても日にちがないと、意味がありませんので注意が必要です。
大安吉日とか、明確にいつなのか分からない記述ではいけません。
しかし、過去の判例では、クリスマスイブとか、体育の日みたいに年と月と共に書いてあれば大丈夫というのがあります。
ただ、そういった遊び心を入れるより、確実に書いておいたほうが無難でしょうね。
自分の身内に特別な事情がある人の場合、被相続人が相続のために遺言書を残しているとしても、気になりますよね。
例えば、コレラなど隔離が必要な病気で、世間との交流を断絶されているとか、犯罪を犯して長い間、刑務所に入っているとか、冒険家の肩書きがあり、色々な場所に行っていて、タイミング的に連絡が取れないまま、死と隣り合わせの状態になるケースも考えられます。
ただ、安心して欲しいのが、遺言による相続には、特別方式というものがあることです。
例えば、前者のような隔離や刑務所に入っている場合などは、隔離地という方式が採用されますし、後者の場合では緊急時が採用されます。
しっかりと、法律では用意されていますので、漠然とした不安を持っていた人は、ゼヒ安心して欲しいです。
もちろん、こういった身内の方が、何人もいるということは考えづらいですし、緊急時となると、よほどのタイミングでないと、起こり得ませんがありえる確率が高いなら、遺言書を書く人も、ちゃんと考えるべきでしょうね。
ドラマなどで見ていると、急な事故や事件に巻き込まれて死亡の危機に際し、手帳などに残した走り書きが遺言として取り上げられることがあります。
これは緊急時に限って認められる可能性があるもので、死亡危急時遺言といいます。
民法第976条(死亡危急時遺言)
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
このような死亡の危急時の場合に限らず、遺言は、民法の規定にそった形式に基づいて書かなければなりません。この形式に少しでも外れていると、遺言として認められなくなるので注意が必要です。
たとえば、自筆証書の場合、全ての文書を自分が手書きすること、および日付を入れ、署名・捺印することが求められます。パソコンのワープロソフトで制作したものではダメなのです。
また、映像を用いたビデオレターやテープ等に録音した音声も、遺言としては認められません。
これらは亡くなった人以外の誰かが編集できる可能性が残されており、相続人のひとりが自分に有利に内容を編集してしまう可能性があるからです。
これに対して、その人の筆跡というのはなかなか真似ができず、見る人が見れば、誰が書いたか分かります。
亡くなった人が自分で書くように定めることで、本人の遺志を担保しているのです。
親が亡くなった場合などに、遺産の相続などは、兄弟間の話し合いによって行われることが多いですが、亡くなる親の遺言などがある場合には、その言葉に基づいて行われることが多くあります。
遺言は、亡くなる人物が残してきた遺産などを、どのように引き継ぐかを指示することが多く、故人様の希望に添い行う必要性があります。
そのため、遺産などの相続において、故人様の遺志を最優先に行い、それ以外の部分を兄弟間や親族間の話し合いなどで決めます。
このように、相続にあたっては、故人様の遺志を受け継いだ内容で行う必要があるために、故人様の意見を重要に聞く必要があり、それらに背いた対応を行わないようにしなければいけません。
しかし、交通事故などで急死した場合や、遺言などをしなかった場合においては、遺族や兄弟間との話し合いによって、遺産を誰がどのような形で引き継いでおくかを話し合い、決めていく必要性があるために、勝手な行動は禁物です。
遺言とは、亡くなった後の財産の処分等の配分を事前に書面で残しておくことです。
その効力を生じさせるためには、民法上に規定する方法に従って行うことが必要となります。
人が亡くなるとその財産に関しては相続が発生するのは常ですが、あらかじめ書面にまとめておくことで、被相続人の意思に基づいて自分の財産を相続人等に振り分けることが可能です。
なお遺言の方式には、普通方式と特別方式の二つの方式に分けることが出来ます。
普通方式の場合は自筆証書・公正証書・秘密証書で、特別方式は一般危急時・難船危急時の場合や一般隔絶地・船舶隔絶地に居る場合に行われる方式です。
その中でもオーソドックスに行われる方法には、自筆証書か公正証書による方法がよく知られています。
自筆証書は文字通り、自分で筆記して記す方法で全文を手書きで記載する必要があり、日付と氏名も記載し実印ではなくとも押印してあることが必要条件です。秘密証書遺言と言う方法もありますが、あまり利用されていません。
公正証書遺言以外の方式の遺言については、民法上は保管している人が相続が発生したことを知ったときから、遅滞なく家庭裁判所に提出してその検認を受けることとなります。
そして、公正証書の方法では最寄りの公証役場に行って行う遺言で、実際に自筆による不備で効力が発生しないことを回避したい場合に行われるケースも多いです。
相続をする場合の遺言は、あなたが亡くなった後に力を発揮するものであり、生前は、まったく効果のあるものではないので、気持ちの変化から訂正したくなる場合もあるでしょう。
ただ、遺言はこの世にいなくて、声を発することが出来ない人の意思を確認するものですから、かなり厳格にルールが定められています。
自分が直接、紙に書いたものしか認められませんし、書き直す場合は適当に黒塗りにしたり、線を引いたりしたものは認められません。
この世にいない人の意思を確かめるものですから、改ざんを疑う余地のある形のものは、法律としてまったく認められないというわけなのです。
では、書き直す場合は、どのような選択肢があるのでしょうか。
まず、一部分を直すだけでも、訂正箇所に二本線を引いて、印鑑、欄外に行と削除の文字についてを説明し、新しく記入した内容を書く必要があります。
そうやって、キッチリと行うか、破棄して書き直すかの選択肢があるのです。
大きな資産を持っている人こそ、生きているあいだに、自分が死んでしまった後のことについて、考慮しておく必要があります。
それぞれの身内における状況を鑑みて、自分の意思で分配を決めておけば安心ですからね。
そのツールとして便利なのが自筆証書遺言です。
自筆証書遺言は、公証役場などの第三者の関与が必要ありません。お手軽な遺言です。証書に付ける印も、拇印でも印鑑でもいいのでとにかく残しておきたいです。
こういった部分の許容範囲を見ると、やはり外国と違って日本は印の効力が高い国なんだなと、思わされますよね。
ただ、絶対条件として自筆証書遺言は、全文が直筆であることがあります。
ですから、ワープロで書いたとかではもちろんいけませんし、限られた人間しか知らないパスワードを駆使して、ハードディスクにデータとして保存していたといっても、それは認められません。
自筆証書遺言のデメリットとして、相続が発生した後に、遺言書の保管者や相続人の申出により、遺言書の検認手続をしなければ、各種相続手続きに使用することができないという点があります。公正証書遺言であれば、検認の手続きは必要ありません。
あなたが稼いで自分の資産として残してきたものや、受け継いできたものなどは、亡くなった時に法律に基づいて、分配されます。
ただ、最も多く受け取る配偶者が浮気ばかりしていて、納得できないとか、家庭を持ってからお盆でも正月でも、まったく顔を出さない薄情な息子には残したくないなど、色々な感情もあるでしょう。
その場合に有効なのが、相続における遺言です。
自分の意思というのを、しっかりと残すことが出来るので、利用するべきでしょう。
法律の専門家である弁護士などに相談して、しかるべき場所に保存しておけば、改ざんされたり破棄されたりする恐れもないですからね。
ただ、覚えておくべきことがあります。
それは、相続させたい相手が子供、もしくはペットである場合です。
まず、ペットはアウトです。
いくら可愛くて家族でも、法律として人か法人に限られていますからね。
さらに、未成年者は満15歳以上です。
こういった条件をちゃんと把握しておきましょうね。
ある程度の金融資産や、マイホームなどの不動産資産を持っている人なら誰しもが、相続について考えておくべきでしょう。
命は永遠ではなく、誰しもが死ぬ時を迎えるわけですからね。
そうなった場合に、自分には関係ないでは、明らかに無責任です。
さらに、自分が相続させたい人がいる場合には、遺言書を残しておく必要があります。
この時に、考えておきたいことがあります。
それは、絶対に書面として残しておくということです。
現在は、携帯電話ですら、高画質で動画を残しておける世の中ですから、自分がしゃべっている動画を残しておくとか、録音しておくとかそういった形で残そうと思っている人も多いでしょう。
さらに、データとして色々なものが保存できますから、それを利用してパソコンのメモ帳なんかに残しておこうと思っている人もいるかもしれません。
実は、これらのような簡単に編集できてしまうようなデータ系は遺言としては認められないのです。
そのことを、よく覚えて考えておいてくださいね。
遺言とは一般的に故人が自らの死後のために遺した言葉とか、文章のことを指します。
人はいつかは亡くなってしまいますが、その時期は誰にもわかりません。
もしものときのために、自分の遺志を記しておくことは、残された者が困らないためにも実はとても大切です。
ただし、遺言書を書き残すのであれば、全文を自署することが基本です。いまの時代、パソコンで作成したほうが簡単と思われるかもしれませんが、民法では、有効な遺言書の様式が決まっており、「自筆証書遺言」という方式で作成するのであれば、全文を自署する必要があります。
もし、全文を自署するのが難しいということであれば、秘密証書遺言という方法もあります。この方法は、文章はパソコンで作成しても有効です。
この方法は、遺言者に押印した印鑑と同一の印鑑で封印した遺言書を持って公証役場に行き、公証人と証人二人の立会のもとに自分の遺言書である旨と、筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が遺言者の申述をその封書に記載した後、遺言者及び証人と共にこれに署名して印を押すという方法です。
さらに遺言をする人が判断能力がある状態で書かれたものというのが必要です。
ありがちなのが財産目当てで、老人ホームなどに入っている親に書かせる例などがあるようですが、認知症などで判断能力がなくなった後に作成した場合、これは無効です。故人が生前元気であったときの自筆だというのが重要です。
ですから生前から、財産はこのように残したいという希望がある場合は上記の自筆証書遺言や秘密証書遺言、公正証書遺言をしておきましょう。
そこまで大げさにしたくないというときは、40代のころから自筆で残しておくメモリアルノートなどを残している人もいるようです。
遺言書を準備されている方ってどれくらいいらっしゃるのでしょうね。
ドラマなどではこれがキーワードになったものも多いようです。
遺産が多い場合には、そして被相続人の範囲が広い場合などには正式なものを作成しておく方が、死後のことを考えればいいのでしょう。
遺言書は、どのような形式であっても効力を有するものではありません。遺言の作成は、民法によってその様式が定められている様式行為であり、自筆証書遺言・公正証書遺言など、定められた様式で作成したものだけが有効になります。
これらは、署名捺印後に封印され、作成者が亡くなられるまで、厳重に保管されます。
しかし、公正証書にのっとったもの以外には、例え封印されていても、家庭裁判所に被相続人が立ち会う検認手続の中でないと、開封することができないと定められています。
何らかの事情で本人が出席できない場合には委任状を添えての代理人の出席も認められています。
しかし、例外的なケースも法律では詳細に定められているようなので、いずれにせよ、専門家の知恵を借りた方いい案件には違いないですね。
このあたりが遺言書に関する、ごく初歩的な知識ではないでしょうか。
こうした書状を作成するには、まず、準備段階としての財産目録を作っておく必要があることなどつけ加えさせていただきます。
人の平均寿命はおよそ85歳前後だと言われています。
もちろん個人差はありますが、80歳を超えたら少し寿命を意識する必要が出て来ます。
身の回りを整理したり、親しい友人に会いに行ったり等、思い残しがないよう、人生を楽しく満喫しましょう。
また子どもたちや孫達がたくさんいる方々は、遺言書を作成した方が良いかもしれません。
土地や株券、預貯金や美術品など、自分の財産を正しく希望者に相続させたいなら、専用の書類を作る必要があります。
書面無しのまま寿命を全うしてしまうと、遺産は、相続人全員による遺産分割協議によって、誰が引き継ぐのかを決めなければいけません。遺産がすべて現金であれば、平等に分けることができますが、不動産以外に遺産がない場合など、平等に遺産を分けることができないようなケースでは、相続人の間に争いがおこることもありえます。俗によくいう、「争続」というものです。
そういった争いを避けたいという思いをお持ちの人々は、事前に遺言書を作成し、厳重に保管しておきましょう。「子どもたちの中でも特に良くしてくれた息子、介護に励んでくれた孫には、多めに財産を託したい」、それは一般的な思いでしょう。
ただ肝心の書類に不備があっては「無効」になり兼ねません。出来れば最初から弁護士さんの指導のもと、遺言書を作成したいところです。
財産の多い少ないに関わらず、相続が発生すれば、残された者の間で財産を分ける必要があります。
よく、うちは財産が少ないから争いになることもない、という方がいますが、むしろ、少ないからこそ争いになるケースがあります。
たとえば、Aさんには妻と2人の子供がいます。
財産は自宅の建物500万円と1000万円の土地、銀行預金が500万円だとしましょう。
民法の規定による相続分は、妻に2分の1ですので1000万円分、子供はその残りを均等にわけ500万円分ずつです。
その場合、どのように分けたらいいでしょうか。
遺言がなければ、相続人3人で話し合うことになります。
直ぐに自由に使える現金を欲しがるかもしれませんし、将来売却できるからと土地を欲しがるかもしれません。
3人でお互いの生活を思いやりながら分けることができればいいですが、それが期待できないならば、遺言で具体的に指定しておくと安心です。
たとえば、高齢の妻には今後も安心して暮らせるよう建物と、働いて収入が得られないので、生活資金として預金500万円を指定します。
息子には将来活用できるよう、土地の所有権を2分の1ずつ与えます。
このように、具体的に記載するのが懸命です。
ある人には妻と2人の子供がいたとしましょう。
そこで、自分が亡くなった時に備えて、遺言をしておきたいと考えました。
自分の弟がよく金に困って、しばしば家に訪れることを警戒し、財産は全て妻と子供に与える、弟には渡さないと書いたとします。
この遺言には意味があるでしょうか。
確かに、あなたの遺志は伝わります。
しかし、もともと民法の規定により、妻と子供にしか相続権がなく、弟に相続権はありません。
むしろ、遺言で残すべきは、もっと具体的な財産の内容と、受け継ぐ者の指定です。
人が亡くなると、どこにどれだけ財産があるか分からず、残された者が苦労することがあります。
財産目録一覧を作成し、どの銀行に預金があるとか、どの証券会社に株式と投資信託を預けているとか、外貨預金はこの銀行にある、投資用のマンションをどこに持っているなど、詳しく明記しましょう。
そのうえで、それを誰に与えるかを指定しておくと、残された妻や子供が分割で無用な労力を払う必要がなくなります。
自分が死んだ時に備えて、遺言は残すべきでしょうか。
この点、必ず書かなければいけないものではなく、残された者に自分の遺志をしっかり伝え、無用な争いなどが起きないようにしておく手段の1つです。
遺言がない場合は、民法の規定に従って分けます。
民法には相続権がある者と、それぞれの相続分が規定されています。
たとえば、妻と子供がいる場合は、妻に2分の1、残り2分の1を子供が平等に分けます。
そういう規定があるなら、その通りで十分だと考える方もいるでしょう。
しかし、あくまで分量を規定しているだけで、何をどれだけ、という具体的な規定ではありません。
残す財産は、均等に分けられる物ばかりとは限りませんから、相続人の間で無用な争いが起きる可能性があります。
そこで遺言に、具体的な財産の名前と金額を指定することで、スムーズに財産を分けることができるようになります。
たとえば、妻に自宅を、長男に土地を、次男に〇〇銀行の預金を、長女には〇〇証券に預けている株式をなどと明確に書いておきましょう。
最近は、紙に文字を書くという機会が減っていますね。
人に何かを連絡する時はメールか電話ですし、文章を書く時はパソコンで入力してプリントアウト、もしくはメールでデータを添付するというのが一般的になっています。
では、遺言書を残したい場合、メールで送信や、パソコンで書いて、データを保存しておけば、それで認められるでしょうか。
亡くなった後に、パソコンを開いたら遺言が残されていた、相続財産の分与方法について書いてあったら、相続人は従わないといけないでしょうか。
この点、民法に定められている自筆証書遺言は、自筆とあるように、紙に自らの手で書き残す必要があります。
その上で、書いた日付と自分の氏名を書き、印鑑を押印しなければなりません。
そのため、メールやパソコン上のデータは認められませんし、パソコンで書いた文章をプリントアウトし、自署と押印だけするという方法も認められません。
全ての文章を自分の手で書かなければ、有効にはならないのです。
内縁の夫婦というのは、籍を入れておらず、法律上、正式な夫婦としては認められていないけれど、長年に渡り一緒に生活し、夫婦同等の関係を持っている人のことを言います。
恋人同士が同棲する程度のレベルでは、内縁の妻、内縁の夫とは言いません。
最近では、特に結婚を阻む事情がないのに、敢えて籍を入れずに過ごすカップルもいるようです。
しかし、長年に渡り、お互いに財産を築きながら暮らしていても、いざ、どちらかが亡くなると、残された者には法律上、相続権がありません。
財産は亡くなった人の親や兄弟姉妹のもとに行ってしまい、内縁関係にある者は、その後、自分の財産と収入だけで生きて行かねばならなくなります。
そこで、遺言書を残すことで、内縁の妻や夫に財産を残すことが可能になります。
この点、内縁の子供に残したい場合も、遺言に明記しておきましょう。
内縁の子供とは、内縁の妻と自分の間にできた子供ではなく、内縁の妻の連れ子などを言います。
自分の間にできた子供であれば、子供として相続権がありますが、可愛がっていた血のつながりのない内縁の子供にも財産を与えたい場合は、遺言に書きましょう。
自分が亡くなった時に、可愛がっている孫たちに財産を分け与えたい場合、どうしたらいいでしょうか?この点、自分の子供には相続権がありますが、その子供である孫にはありません。
考えられる方法は大きく3つあります。
1つは、孫と養子縁組みする方法です。
孫も子供の1人になりますから、相続権が発生します。
しかし、祖父の養子にするというのは、よほどの資産家が税金対策として行う場合は別として、あまり好まれる方法ではないでしょう。
2つ目として、生命保険の受取人に指定する方法があります。
生命保険金の受取人は一定の範囲の親族であることが基本ですが、相続権がある人という限定はありません。
そこで、受取人に孫を指定すれば、確実に孫が受け取ることができます。
もっとも、生命保険に入るには年齢制限や健康状態のチェックが必要な場合もあります。
既に加入している保険の受取人を変更する方法も考えられます。
3つ目として、遺言書を残す方法があります。
妻や子供に加えて、孫たちの名前を挙げ、それぞれ何をどれだけ与えるか書いておきます。
ある男性には高齢の妻と、2人の息子がいます。
息子はそれぞれ結婚していて、独立して家庭を持っています。
近年は、子供がいても高齢者のみで過ごす家庭が増えていますが、このご家庭もそうでした。
もっとも、次男のお嫁さんが、離れて住んでいるにも関わらず、月に2度くらいは、孫を連れて様子を見に来てくれました。
さらに、具合が悪くなって入院してからは、週に1度病院に通うとともに、1人残された妻を引き取って面倒を見てれました。
一方、長男家族は割と近くに住んでいたのに、子供の受験で大変などと言って、ほとんど顔を出しませんでした。
そこで、男性は考えます。
次男の嫁と、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんと慕ってくれる次男の子供である孫に財産を残したいと思いました。
民法の規定では次男の嫁に相続権はありません。
また、孫も養子にしない限りは、相続権がありません。
相続できるのは妻と息子2人になります。
こんな時、遺言書を残して、財産の一部を次男の嫁と孫に与えるように書いておけば、一生懸命お世話してくれたお礼をすることができます。
ある男性が結婚して子供が1人生まれましたが、離婚したとします。
その後、再婚し、その妻との間には2人の子供が生まれました。
さらに、その後、また離婚して、再び結婚し、新しい妻との間に子供が1人生まれました。
この場合に、この男性が亡くなると、誰に男性の財産を受け継ぐ権利があるのでしょうか。
相続できるのは、現在の妻と、男性の子供4人全てです。
法律上、妻は1人しかいませんし、離婚によって縁が切れますが、子供の父親は1人です。
もちろん、離婚した妻たちが再婚して、新しく父親ができることはありますが、その場合でも、実の父に対する相続権は無くなりません。
相続分は民法の規定に従えば、現在の妻が2分の1で、子供は全て平等なので残りを8分1ずつ得ることができます。
もっとも、これまで顔も会わせたことがない母親違いの子供たちが、話し合いによりどの財産を得るかを決めるのは難しいでしょう。
また、未成年の場合はその母親が出てくることになります。
無用な争いを防ぎ、スムーズに分割できるよう、遺言で財産の種類や金額などを指定しておくといいです。
また、新しい父親がいる子供には少な目にして、現在の妻の子供に多めに分けるということも、遺言書を残せば可能になります。