自分の身内に特別な事情がある人の場合、被相続人が相続のために遺言書を残しているとしても、気になりますよね。
例えば、コレラなど隔離が必要な病気で、世間との交流を断絶されているとか、犯罪を犯して長い間、刑務所に入っているとか、冒険家の肩書きがあり、色々な場所に行っていて、タイミング的に連絡が取れないまま、死と隣り合わせの状態になるケースも考えられます。
ただ、安心して欲しいのが、遺言による相続には、特別方式というものがあることです。
例えば、前者のような隔離や刑務所に入っている場合などは、隔離地という方式が採用されますし、後者の場合では緊急時が採用されます。
しっかりと、法律では用意されていますので、漠然とした不安を持っていた人は、ゼヒ安心して欲しいです。
もちろん、こういった身内の方が、何人もいるということは考えづらいですし、緊急時となると、よほどのタイミングでないと、起こり得ませんがありえる確率が高いなら、遺言書を書く人も、ちゃんと考えるべきでしょうね。
ドラマなどで見ていると、急な事故や事件に巻き込まれて死亡の危機に際し、手帳などに残した走り書きが遺言として取り上げられることがあります。
これは緊急時に限って認められる可能性があるもので、死亡危急時遺言といいます。
民法第976条(死亡危急時遺言)
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
このような死亡の危急時の場合に限らず、遺言は、民法の規定にそった形式に基づいて書かなければなりません。この形式に少しでも外れていると、遺言として認められなくなるので注意が必要です。
たとえば、自筆証書の場合、全ての文書を自分が手書きすること、および日付を入れ、署名・捺印することが求められます。パソコンのワープロソフトで制作したものではダメなのです。
また、映像を用いたビデオレターやテープ等に録音した音声も、遺言としては認められません。
これらは亡くなった人以外の誰かが編集できる可能性が残されており、相続人のひとりが自分に有利に内容を編集してしまう可能性があるからです。
これに対して、その人の筆跡というのはなかなか真似ができず、見る人が見れば、誰が書いたか分かります。
亡くなった人が自分で書くように定めることで、本人の遺志を担保しているのです。