2014年6月アーカイブ

身近な法律トラブルで多いと言われるのが、相続に関する問題です。故人が残した財産、それを正しく分与するためには、工夫が要ります。
どうしても当事者間で分与手続きを進めると感情的な対立が起き始めます。「お葬式の手配は私がほとんど行った。遺産は多くもらいたい」や、「でも、僕がほとんど親の介護を担当したよ。割合を増額してほしいね」等といったセリフが飛び交う事態になりかねません。
これらの主張は、寄与分に関する主張と思われます。民法では、被相続人の財産の維持や増加に貢献をした相続人の相続分を増加させると規定(民法904条の2)されています。ただ、どのような貢献であっても考慮されるわけではありません。「特別の寄与」があった場合に限り、相続分の加算をするとされています。
また、寄与分について注意すべきは、寄与分が認められるのは相続人についてのみであるという点です。たとえば、内縁の妻は法定相続人に該当せず、法定相続分はありません。このような立場の人が相続財産の維持や増加に特別の貢献をしたとしても、この内縁の妻に寄与分も相続分も認められないということになります。被相続人がこのような立場の人に相続をしてもらいたいと思うのであれば、遺言を残すしかありません。また、相続欠格に該当した相続人や廃除された相続人についても、寄与分は認められません。
遺産分割の話し合いについて協議がまとまらない場合には、調停や審判による必要があります。寄与分の主張などについても、これらの手続きの中で主張していくことになります。
遺産分割の争いは、長期化することも多いです。また、骨肉の争いは精神的にも負担が大きいです。こういった無駄な対立を防止するため、今では生前から遺言書を残す高齢者が増えています。相続内容を明記した書類があれば、親族間の争いは未然に防止出来ます。前もって一筆書いておけば、自分をよく慕ってくれた孫や兄弟、担当介護士さん等に、それなりの財産が残せます。
ただ注意したいのが、遺言書の作成方法です。いくら個人的な思いを丁寧にまとめても、作成手順に誤りがあると、それが全くの「無効」になってしまいます。相続に関する重要書類を生前に作成される場合は、必ず身近な弁護士事務所に相談した方が賢明です。

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遺言は、民法によって方式が定められており、法律に定める方式にしたがわなければすることができません。
また、遺言できる事項(遺言事項)についても、民法やほかの法律に定められたものに限られますので、それ以外の事項を遺言書に記載しても、遺言としての効力は認められません。

遺言事項としては、たとえば次のような事項があります。
1、特定の財産を相続させる遺言
「遺言者は、遺言者の有する〇〇を、妻である誰それに相続させる」などと記載することで、特定の財産を相続させることができます。子の場合、相手方が法定相続人であれば、遺言者が死亡すれば直ちに遺産が当該相続人に、相続により承継されることになります。また、相手方が相続人でない第三者である場合には、相続ではなく遺贈の効力が生じるとされています。
遺産については、きちんと特定する必要があります。たとえば、土地であれば、登記されている所在・地番・地目・地積を特定することになります。建物であれば、同じく登記されている、所在・家屋番号・種類・構造・床面積で特定することになります。
2、子の認知
遺言書に、「遺言者は、だれそれを認知する」ということを記載することで、認知をすることができます。遺言による認知の効力は、遺言者が死亡したときに生じます。遺言執行者が就任した場合には、執行者が役所に認知の届け出をすることになりますが、この届け出は、届け出自体が効力要件である「創設的届け出」ではなく、事後の報告のいみしか持たない、「報告的届け出」であるということになります。
3、相続人の廃除
相続人の廃除とは、推定相続人に著しい非行の事実(被相続人を虐待したり、被相続人に重大な侮辱を加えたとき等)がある場合に、推定相続人の相続権を奪う制度です。これを、遺言ですることができます。たとえば、「遺言者の長男であるだれそれは、遺言者に対して継続的に暴力をふるってきたため、遺言者は長男を廃除する」などと書きます。遺言による推定相続人の廃除は、遺言執行者が家庭裁判所に請求し、遺言者の死亡のときにさかのぼってその効力を生じます。

また、これらの法定の遺言事項でない事項について遺言に記載した場合、法律的な効力はありませんが、一般的には、付言事項として、「私が亡くなったあとも、兄弟仲良く暮らして下さい」などと遺族への希望を書いたり、葬儀の方法の希望を書いたりすることがよく行われています。